【高円寺 司法書士】相続相談サイト|中野司法書士事務所 > 相続ブログ > 信託が終わったら?|残った信託財産や税金の問題について

信託は、あらかじめ契約で定めた特定の事由が生じたとき、法律上の終了事由が生じたとき、当事者の合意があったときなどに終わります。信託が終わると受託者の仕事も終わりとなるのですが、その後の財産についてはどうなるのでしょうか。

ここでは信託が終わったら残った信託財産がどうなるのか、そして信託財産の行方によって生じる税金の問題についても説明します。

 

信託終了後の信託財産はどうなるのか

信託財産はもともと委託者の財産です。これを委託者に託して、受益者の利益のために契約に沿って運用をしています。そのため信託財産は一応受託者の所有物として管理されていることになりますが、その恩恵を受ける権利は受託者にありません。

 

そもそも信託は受益者のための仕組みですので、信託が終わってからもそのまま受託者のものとして放置すべきではありません。信託に係る債務が残っているときはその分を清算し、残余財産については優先順位の高いものから順に取得するというルールになっています。

 

まずは債務を清算する

信託財産を管理するにも費用がかかります。費用の大きさについては財産の種別や管理方法によっても異なりますが、信託が終わったからといってその債務をなかったことにはできません。費用請求の権利を持つ債権者が不当に不利益を被ってしまいます。

 

そこで未払いの費用等があるときは信託中同様に、信託財産からその費用を支出して、弁済を済ませていきます。

 

    信託契約で定めた人物に帰属する

    次に、委託者らが当初定めた契約の内容を確認します。契約書に、「信託が終わったら〇〇が残余財産を受け取る」といった旨の記載があれば、その指定に従って財産を帰属させます。

     

    信託中は受益者として定めた人物が経済的利益を受けていますし、信託が終わってからも当該人物が受け取ることができると定める例も多いでしょう。信託中の受益者が終了後も給付を受けるときは「残余財産受益者」と呼ばれます。 

     

    一方で、受益者として設定されていなかった人物について残余財産を取得する権利を与えると規定されることもあります。この場合は「帰属権利者」と呼ばれます。 

     

    いずれにしろ、信託自体当事者間の契約に基づいて開始されるものですし、終了後の財産についても契約で自由に定めることができます。

    委託者(またはその相続人)に帰属する

    契約書に残余財産受益者・帰属権利者に関する定めが置かれていない(もしくはこれらの人物が給付を受ける権利を放棄した)ケースもあるでしょう。このときは原則として委託者に残余財産が帰属します。元の所有者に戻るということです。

     

    ただ、信託の終了事由として「委託者の死亡」を定めているときは、帰属先となる委託者が存在していません。そこで残余財産を取得する権利を相続する「委託者の相続人」が新たな帰属先となります。
    このときは相続一般のルールに従い、共同相続の場面においては遺産分割をすることになります。

     

    清算受託者に帰属する

    委託者に誰も相続人がいない、あるいは相続人が相続放棄をしたときは、帰属先がなくなってしまいます。

     

    そこでこのときは「清算受託者」に帰属することになっています。

     

    清算受託者は信託財産に係る債務弁済であるなど、信託に関わる清算事務を担う受託者を指します。信託中における受託者と別の人物を指定することもできますが、通常は受託者が引き続き清算事務を担うことになるため、そうすると受託者が最終的な帰属先ということになります。

     

      贈与税や相続税に注意

      信託が開始するとき、受益者が信託中に変更されたとき、そして信託が終了したときは、税金の負担が発生することがあります。あくまで信託契約に基づく財産の移転ではありますが、実態として贈与と同視できる状況にあれば「贈与税」が課税されますし、信託終了の原因が相続開始にあるのなら「相続税」が課税されることもあります。残余財産の移転に伴い対価のやり取りがあるのなら「所得税」について考慮しなくてはなりません。

       

      贈与税が課税されるケース

      ・受益者以外が無償で取得するとき。

      ・取得者が納税義務者。

      相続税が課税されるケース

      ・残余財産が帰属する人物から相続で取得するとき。

      ・残余財産を取得した相続人が納税義務者。

      所得税が課税されるケース

      ・残余財産が帰属する人物から対価を受けたとき。

      ・対価を受けた受益者が納税義務者。

       

      受益者(または受益者を兼ねた委託者)にそのまま帰属するときは、実質経済的利益に動きがないため課税はありません。しかし別の人物に帰属するときは財産を贈与されたときと同じ状態になりますので、贈与税が課税されます。

       

      ただ、その残余財産の帰属に条件を課しており、対価の支払いを必要としていたときは、無償で贈与を受けたときと状況が異なります。売買で財産を得たときに贈与税の負担がないのと同じく、このときは対価を受け取った受益者側が譲渡所得を得たとして課税義務を負います。

      ※対価は公正な価格でなければならない。ごく少額の金銭の授受があったからといって贈与税を回避することはできない。

       

      なお、信託財産に不動産が残っているときは「登録免許税」や「不動産取得税」が発生することもありますので要注意です。名義変更をするために不動産登記の申請手続も必要となります。

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