信託は便利な仕組みですが、万能ではありませんし、注意事項もいくつかあります。少なくとも次の点は知った上で信託サービスや家族信託を始めることが大切です。
- 信託開始までの手間が大きい
- 信頼できる受託者が必要
- 信託には費用がかかる
- 投資の場合成功するとは限らない
- 身上監護までは託せない
- 専用口座に対応した銀行が少ない
- 信託に精通した専門家が少ない
ここでは、これらの課題について解説していきます。
信託開始までの手間が大きい
信託を上手く活用すればさまざまな問題を解決することができますが、仕組みが複雑で、契約内容の設計なども難易度が高いです。一般の方のみで対応するにはハードルが高く、専門家を利用する必要があるでしょう。
また、信託契約を締結してからは委託者の財産を受託者へ移転しないといけません。名義変更が必要で、不動産であれば登記申請が必要ですし、専用の口座を作成する手間なども発生します。
信頼できる受託者が必要
信託は、財産の管理や資産の運用を他人に任せるための仕組みです。信託財産は受託者の管理下に入り、元所有者である委託者でも自由に処分することはできなくなります。
ただ委託者は受託者を監視する権限も持ち、判断能力がしっかり残っているうちは大きな問題も起こりにくいです。他方、認知症などにより判断能力が低下してくると、受託者への監督機能が弱まってしまいます。
信託監督人などを選任することもできますが、前提として信頼できる人物を受託者として定めるべきです。特に事業者ではない一般の方が受託者となる「家族信託」ではより注意が必要です。信頼できる人物がいないと信託を始められませんし、その方にはさらに財産の管理能力が求められます。
信託には費用がかかる
金融機関が提供する信託サービスを利用する場合、費用の発生は避けられません。家族信託を始めるときは費用が必須とはされないものの、受託者の作業量が多い場合や高度な運用を頼むときは報酬を設定することもあります。
信託監督人を選任するときはさらに費用が増えますし、信託を始めるまでには専門家への相談料や手続代行に対する報酬なども発生します。また、他益信託とする場合は贈与税がかかることもあります。
このように、信託では一定の場合費用負担が発生することも覚えておきましょう。
投資の場合成功するとは限らない
金融機関の投資信託サービス、家族信託による株式や不動産の運用は、成功するとは限りません。投資が上手くいって大きな利益を得られることもあれば、損失が出てしまうこともあります。
信託でご自身より信託に詳しい人物に財産を託したとしても財産が増える保証はありませんので、投資の場合はリスクの存在についても認識のうえで信託を始めるべきです。
身上監護までは託せない
信託は成年後見制度に代わる便利な仕組みですが、あらゆる面で成年後見制度より優秀ということでもありません。
成年後見制度では被後見人の法律行為をサポートできるなど、身上監護にも対応しています。財産管理においては、被後見人による散財を防いだり悪徳商法から守ったり、基本的には損失を防ぐために機能します。
これに対し信託は財産管理に特化しており、成年後見制度では実現できない資産運用もできます。しかしながら、身上監護に関しては対応できる範囲が限られています。信託財産の運用に関わる法律行為のみが代替でき、その他の行為については受託者でもサポートができません。
そのため認知症対策として信託を始める場合でも、財産以外の行為をサポートするには成年後見制度を併用する必要があります。
専用口座に対応した銀行が少ない
信託を始める場合、信託財産を受託者個人の財産と分離して管理しないといけません。そこで受託者が個人的に使っていた口座をそのまま使うべきではなく、専用に口座を開設する必要があります。
そしてこのときの口座は、信託用であることがわかる「信託口口座」として開設すべきです。単に新しく口座を作るだけだと名義が受託者個人の名前であるため、第三者から見ると信託財産かどうかが判別できないのです。
ただ、銀行が信託口口座に対応していないケースがあります。多くの場合で口座は必要ですし、信託口口座に対応した銀行を探し、その上で開設することを認められなければいけません。信託口口座を作るときは公正証書として作成された信託契約書の提出が求められるなど、一般的な口座より手間がかかる点に留意しましょう。
信託に精通した専門家が少ない
安全に信託を始めるには、あらかじめ司法書士などの専門家に相談しておくことが有効です。信託契約の定め方、契約書の作成、名義変更の手続など、幅広いサポートを受けることができます。
しかし、法律の専門家であっても誰もが信託に詳しいとは限りません。そこで専門家を探すときは、信託の支援を強みとしていること、信託の取り扱い実績があることなどをチェックします。手間もかかりますが、信託を成功させるため、専門家探しには慎重に取り組みましょう。
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