少し特殊な形ではありますが、家族信託でも財産の移転が発生します。そのため信託を始めた際や終わる際などに税金が課されることもあり、コストについて考えるときは税金も無視することができません。
どのような税金が、どのような場合にかかるのか、当記事でご紹介いたします。

贈与税がかかるケース
「贈与税」とは、個人から贈与によって財産を得たときに課される税金のことです。無償で財産を与えられたとき、与えた贈与者ではなく与えられた受贈者に納税の負担が発生します。
家族信託においても贈与税が課される機会はあります。
贈与税が課されるのは「相続によらず、対価の支払いもなく、財産を得た場合」です。
財産の名義は受託者となりますが、実質の利益は受益者が得ることになります。そこで受託者に課税されるのではなく、受益者に対して課税されます。
ただし家族信託では自益信託(委託者=受益者となるケース)となることも多いです。このときは委託者から財産上の利益が移転しませんので、課税はありません。
そのほかにも、契約が継続している最中に無償で受益者の設定が変わった場合、または受益者の死亡によらず契約が終了し、財産を無償で取得した場合も贈与税が発生します。
相続税がかかるケース
「相続税」は、亡くなった方の財産を相続によって取得したときに課される税金です。贈与税と同じく財産を取得した側にあたる「相続人」に納税の義務が課されます。
※遺産の総額が基礎控除額(最低でも3,000万円)を超えないなど、一定の場合には納税の負担は発生しない。
家族信託においては終了時に課税されることが多いです。受益者が亡くなったことをきっかけに契約が終了し、その後の財産を取得する方に対して相続税が課されるのです。
また、受益者が亡くなった後契約が終了しなくても、新たな受益者が定められて継続する場合は、新受益者に対して相続税は課税されます。
譲渡所得税がかかるケース
贈与税や相続税は、無償で財産を得た方に対して課される税金です。これに対して対価の支払いを持って財産の移転があった場合、その対価を受けた方に対して譲渡所得税が課されます。
労働で得た賃金に対して所得税がかかる仕組みと同様です。
例えば他益信託(委託者≠受益者となるケース)で信託を始めるとき、受益者となる方から対価を受けていたとしましょう。受益者は無償で利益を得ていませんので贈与税はかかりません。
一方で委託者は利益を得ていますので、その対価に対応する譲渡所得税の負担が発生します。受益者を変更するときに新たな受益者から対価を得た場合も同じで、対価を得た方に税金の負担が発生します。
もし契約終了時に対価の支払いがあったのなら、やはりこのときも対価を受けた方に課税が発生します。
不動産を信託するときの税金
不動産を信託するときは要注意です。
信託を始めるときに土地や建物などの権利関係を公示する必要があり、そのために「登録免許税」の支払いが発生します。
登録免許税とは、登記・認定・特許・免許・認可といった特定の制度に則る登録に対して課される税金のことです。不動産に関しては登記を行う必要があり、その際登録免許税が発生します。
ただし所有権移転に関して課税されるのは「売買」や「相続」「贈与」があった場合であり、信託を理由とする所有権移転には課税がありません。しかしながら、「信託されている不動産」という事実を公示するための登記は必要で、そのために登録免許税が発生します。
また「固定資産税」が発生することもあります。これは「固定資産」と呼ばれる家屋・土地・償却資産の所有に対して課される税金で、信託が開始されることによって負担者が変更されることもあります。
その他の税金のように新たに発生するものではありませんが、家族信託の開始に伴い所有権が移りますし受益者がその利益を得ることになりますので、負担者が変わります。所有者となった受託者に納税の通知が届くことになりますが、通常は受益者負担となります。
信託を始めるにあたってコストを気に掛けるのであれば、税金の有無やその大きさにも着目してください。特に贈与税は比較的大きな負担になることも多いですし、一度税理士に相談してみることをおすすめします。また不動産を信託する場合は税金の問題に加え登記申請という手続上の負担もあります。こちらは司法書士が専門分野ですので、不動産を持っている方は司法書士に相談してみましょう。
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