亡くなった方の妻や夫の住まいと生活資金を確保する必要があるなら「配偶者居住権」について知っておくことが大切です。まだ相続が始まっていないなら遺言書の作成で対処できますし、相続開始後でも遺産分割協議で対処可能です。
ただし、ここで解説する4つの要件を満たす必要があります。

配偶者居住権の概要
同居する夫婦において自宅を所有する方が亡くなった場合、一緒に自宅として使っていた配偶者でも無条件にその自宅の所有権を得られるわけではありません。また、自宅を取得できたとしてもその分別の財産が受け取れなくなり、十分な生活資金を確保できない可能性も出てきます。
そんなときに役立つ制度が民法という法律で作られています。特定の条件を満たすときに「配偶者居住権」という権利を認め、亡くなった方の配偶者であれば、亡くなるまで(あるいは一定の期間)無償で自宅に住み続けることができるという制度です。
自宅を所有する権利と居住する権利を分けることで相続分の計算上安く見積もることができ、これまで通りの生活を維持しつつ現金・預貯金などの生活資金も確保できるようになります。
配偶者居住権を取得するための要件
この権利については民法に規定が置かれています。
(配偶者居住権)
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
この条文からは、次の4点を満たせば良いということが読み取れます。
- 亡くなった方の配偶者であること
- 相続開始時点でその建物に住んでいること
- 亡くなった方が、その建物を配偶者以外の第三者と共有していない
- 「遺産分割により取得することになった」または「遺贈の目的とされた」
成立要件①亡くなった方の配偶者である
大前提として、配偶者居住権を取得する方が被相続人(亡くなった方)の配偶者でなければいけません。
ここでいう“配偶者”は、厳格に意味を捉える必要があり、事実上の夫婦関係にあるだけだと条件を満たしません。法律上の夫婦でなければならず、役所に婚姻届を提出して形式的にも夫婦であることが認められなければいけません。
もちろん、相続が開始された時点で夫婦関係が継続している必要があり、元配偶者という立場でもこの条件を満たすことはできません。
成立要件②相続開始時点でその建物に住んでいる
権利の取得をしようとする方は、被相続人が亡くなった時点で当該建物に居住していなくてはなりません。
同制度は残された妻や夫の生活を守ることを目的としていますので、もともと別の家に住んでいて住まいが確保できているのなら、わざわざこの権利を認めて保護する必要がありません。
そこで別居をしているときは、通常この要件をクリアできません。
なお、被相続人が介護施設に入所しており被相続人の所有する自宅に配偶者が暮らしているときは居住権が取得できると考えられます。しかしながら、相続人側の配偶者が介護施設に入所しており一緒に自宅で暮らしていないときは居住権を取得できません。
成立要件③建物が第三者と共有されていない
夫婦で一緒に自宅に住み続けていたとしても、当該建物について、被相続人と第三者が共有をしていたときは、権利の設定ができません。
居住権が設定されると所有者にできることは制限されてしまい、相続の当事者でない第三者に思いがけない負担を強いることになってしまうからです。
成立要件④配偶者居住権を取得する行為があった
以上3点について問題がないことを確認のうえ、遺産分割協議や遺贈などによって居住権を設定しましょう。法的に認められた権利ではありますが、自動的に付与されるものではありませんので、居住権が必要であれば次に掲げるいずれかのアクションを起こさなくてはなりません。
遺産分割協議によるケース

相続人らで話し合って居住権を設定することができます。他の遺産と同じように、遺産分割協議でこれを設定する方法です。
預貯金などの生活資金とのバランス、他の相続人の取り分とのバランスなども考慮しつつ分割を行いましょう。
遺贈によるケース
遺贈、つまり遺言書を使って居住権を取得させることもできます。これは被相続人の側でできる対処法であり、適式に作成した遺言書にその旨を書き記しておけば、遺産分割協議で居住権について話し合う相続人の負担を減らすことができるでしょう。
ただし、遺贈としてではなく、相続の方法を指定する「特定財産承継遺言」として居住権を与えることはできません。特定財産承継遺言は遺贈ではなく相続させること意味しますので、もし配偶者が居住権の取得を望んでいないときは「相続放棄」をしないといけなくなり、その他すべての財産についても取得できなくなってしまいます。
これに対し遺贈なら、相続放棄ではなく「遺贈の放棄」により特定の権利のみを放棄することもできます。
その他方法によるケース
相続人らのみで話し合う遺産分割協議で分割方法がまとまらないこともあります。そんなときは裁判所を利用し、遺産の分割についての「調停」や「審判」による解決を目指します。この調停や審判でも居住権を設定することが可能です。
また、遺贈ではなく「死因贈与」としての形で設定することも認められます。死因贈与は原則として遺贈に関するルールが準用されることとなっていますので、あらかじめ夫婦間で話し合い死因贈与の契約を交わしておくことでも遺贈と同じ効力が得られます。
配偶者居住権の設定の登記も忘れずに

配偶者居住権の設定したときは、登記の手続きも忘れずに進めておきましょう。
登記を備えることによって第三者にも「私が、この建物に居住する権利を持っています」ということを主張できるようになります。もし所有者が第三者に当該建物を譲渡することがあっても、登記をしておけば権利を守りやすくなり、安心して過ごすことができるでしょう。
また、当該建物の所有権を取得した方には登記を備えさせる義務があります。登記申請を怠っているとトラブルが起こるリスクが高くなってしまいますので、法律や登記の専門家である司法書士に頼んで対処しましょう。
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