まず相続放棄とは、被相続人からの相続財産を承継する身分にありながらもその承継を放棄することです。相続放棄をしようとする場合は、相続放棄の旨を家庭裁判所に申述する必要があります(民法938条)。この相続放棄の申し出は自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内にしなければなりません(民法9151項)。そしてこの相続放棄は個人で申し出をすることができます。

では、相続人全員が相続放棄をするとどうなるのでしょうか。これは、相続放棄が用いられる局面を考えながら見ていくと有意義になると思われます。

まず、相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。つまり、相続人全員が相続放棄をするということは、全員が初めから相続人ではなくなるということです。そうなると、文字通り本来相続人になる人と相続財産の縁が切れるわけで、相続財産が宙吊りになってしまいます。 

そこで、法律上は相続財産の管理人の手により相続財産(相続財産法人)を管理することになります(民法9519521項)。このように相続財産を管理することで他に相続人がいないかを公告するわけです。公告期間内に権利を主張する者(相続人)が出ない場合には、家庭裁判所は、特別縁故者の請求により相続財産の一部または全部を承継させることができるわけです(民法958条の31項)。

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者とされています。特別縁故者による請求がない場合には、相続財産は国庫に帰属されます(民法959条)。

以上が、相続人全員が相続放棄をした場合のストーリーになります。 

しかしながら、なぜ相続人全員が相続放棄をするのでしょうか。相続人全員が相続放棄する理由はどのようなものが考えられるでしょうか。

相続財産と言われて、土地や車などを思い浮かべるでしょう。これらの財産はプラスの財産であるわけです。財産を直接使わないにしてもそれらを売却してお金に換価することは悪い気分ではありませんよね。このようなプラスの財産がある一方でマイナスの財産もあるわけです。借金はその典型例です。つまり、借金も相続されるわけです。

借金が相続されるということは債権者(これを相続債権者といいます)にお金を払わなければならないことです。相続財産をプラスのものとマイナスのものを合わせてマイナスのものが大きい場合は、相続しない方が得になります。そこで、相続放棄をすることで相続債権者による取り立てから逃れるわけです。 

したがって、相続人全員が相続放棄をするということは相続財産のうち、借金が多く、承継する借金を放棄するために行われるわけです。逆に、相続債権者は相続人全員に相続放棄をされてしまうと債権を回収することは不可能になるということです。 

上述しましたように、相続人が現れない場合に特別縁故者が相続財産の一部または全部を承継することがありますが、あくまで家庭裁判所の裁量ですから、借金を承継させるのは不当であるとするでしょう。よっていずれの途でも相続人全員が相続放棄を行ったら相続債権者の債権が回収できなくなるということになります。

もちろん、相続放棄をする理由は様々です。しかし、よく言われるケースが被相続人が大量の借金を抱えたまま死亡し、それを相続人が承継するというものです。相続人にとっても苦しい道ですが、借金を抱えるよりは望ましいわけです。 

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