信託(民事信託・家族信託)は大事な財産を守るために役立つ仕組みであり、相続対策や認知症対策として機能します。財産管理や資産運用の体制を整えることにもつながるのですが、問題は仕組みが複雑であり一般の方にあまり知られていないという点にあります。
今から信託をはじめることになったとして、多くの方は何から始めれば良いのかわからず悩んでしまうことでしょう。当記事ではそんな方に向けて「信託をはじめるには何をする必要があるのか」ということを説明していきます。
民事信託・家族信託をはじめるまでの流れ
信託、ここではとりわけ民事信託や家族信託をはじめるまでの流れについて紹介します。
ざっと手順を説明すると、次のようにまとめることができます。
- 信託の目的や内容を検討する
- 信託契約書の作成
- 公証役場で公正証書の作成
- 信託登記申請と信託口口座開設
各手順の内容を見ていきましょう。
信託の目的や内容を検討する
まずは「なぜ信託をはじめるのか?」ということを整理しておきましょう。その目的に応じて信託の設計方法も変わってきますし、そもそも信託で解決できる問題なのか、他に最適な方法はないだろうかと深く検討を進めていくことも可能となります。
ただし、その検討にあたっては専門家にも協力してもらうことがおすすめされます。家族信託などに対する高い専門性を持っているという方でない限り、プロの意見を聞いて具体的な内容を定めていくべきです。
専門家に相談を持ち掛けた場合、まずはヒアリングが行われます。委託者となる方がどのような想いを持っているのか、現状どのような財産状況にあるのかを伝えて情報を整理していきます。
続いて信託の内容を考えていくことになるのですが、その際「利害関係人の調整」も大切です。信託の仕組みを使えば柔軟な設定が可能ですが、その分相続関係が複雑になる可能性もあります。
結果的に親族間での争いを生む危険性もあります。そこで委託者の想いを実現することだけを目指すのではなく、今後の家族仲のことにも配慮し、家族で会議を行っておくなどの対応が求められるでしょう。
家族などの利害関係者との調整ができ、信託内容も定まれば、契約書の作成に取り掛かります。
信託契約書の作成
希望に沿った信託となるよう、細かな約束事契約書として形に残します。「家族信託契約書」あるいは単に「信託契約書」と呼ばれることもあります。
タイトルは大きな問題ではなく、ポイントは次の 5つにあります。
- 信託目的(どんな目的で信託をはじめるのか)
- 受託者(財産の管理や運用を誰に託すのか)
- 信託財産(受託者に託す財産の内容)
- 信託の終了事由(どんな場合に信託を終了させるのか)
- 帰属権利者・残余財産受益者(信託が終了した後の信託財産は誰のものとするのか)
信託契約書の内容が定まるまでにある程度期間がかかることを覚えておきましょう。 2,3回程度専門家の方と打ち合わせを行うことが予想されます。
公証役場で公正証書の作成
一般の方が作成した文書でも、これを公正証書とすることが可能です。公正証書とすることで、文書の存在から生じる法的な効力をより確実なものできます。重要度の高い契約書は公正証書とする例が多く、信託契約書においても例外ではありません。
信託契約書を公正証書化することが法律上の義務として規定されているわけではありませんが、より安全のため、そしてその後の手続で実務上必要とされているため、公正証書作成の手続は欠かせない手順であると考えておきましょう。
例えば信託財産を管理する上で「信託口口座」という専用の口座を用意することになりますが、その開設手続で公正証書として作成された信託契約書の提出が求められることがあります。
信託登記申請と信託口口座開設
信託財産に不動産がある場合、「信託登記」を行う必要があります。信託が開始されると、それまで委託者が持っていた財産も、所有権が受託者へと移転します。不動産は所有者名義を登記する運用になっており、信託が原因で所有が移ったときにも登記申請手続を要します。
また、先ほど申し上げた通り、信託財産専用の銀行口座を作る必要があります。受託者には、自らの個人的な財産と信託財産として預かった財産を分けて管理する義務が課されているからです。その管理の分離を明確にするため、専用の口座を作ります。
信託をはじめるための準備物
信託をはじめるためには、まず、問題点を整理しておくと良いでしょう。ご自身が望む財産管理の在り方、財産の引き継ぎ方など、考えを明確にしておくと信託の設計もスムーズに進められます。
また、信託についての相談を行う際、家族構成や財産状況についても伝えられるようにしておくと良いです。
後は具体的な準備物として、「公正証書作成のための書類」や「信託登記申請のための書類」、そして「信託口口座開設のための書類」も必要になります。
- 公正証書の作成で必要になる書類
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)
- 信託財産についての資料(固定資産評価証明書等) など
- 信託登記の申請で必要になる書類
- 印鑑証明書
- 権利証(または登記識別情報)
- 受託者の住民票
- 信託契約書 など
- 信託口口座の開設で必要な書類
- 本人確認書類
- 印鑑 など
状況に応じて必要な書類は異なりますので、別途提出を求められた書類があるときはその準備に取り掛かる必要があります。また、公正証書であれば信託財産の価額に応じた手数料がかかるなど、信託の準備には費用の負担もかかります。
専門家に依頼をしたときにも依頼料が発生します。料金は依頼先の専門家や依頼する範囲によっても異なります。
費用の負担が心配になるかもしれませんが、今後長く続く信託をできるだけ安全にスタートさせるためにも、慎重な姿勢が重要といえます。依頼前に、料金についてはしっかりと確認しておくと良いでしょう。
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