まず遺言書とは、遺言者(遺言書を書いた人)が死亡した際に発生する相続について、相続分や相続方法などに関して遺言者の意思を反映させたものになります。つまり、遺言書の執行には遺言者はおろか、相続人にも大きな利害があることがわかります。
なお、遺言書に大きく偏った遺産相続をする旨が書かれていたとしても、兄弟姉妹以外の法定相続人(遺言者の子や配偶者、直系尊属)に対しては遺留分の相続財産があります(民法1042条1項参照)。これは、被相続人の一定の近親者に一定の割合で留保された相続財産のことです。遺言書を以ってしても遺留分は侵害されません。
話を遺言書に戻すと、遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つの種類の遺言書があります。このうち、最も用いられるのは自筆証書遺言であります。それは、公証人の立ち会いなしで遺言書を書くことができるからです。その分、家などに保管するわけですから、形式的に厳格な要件が定まっています(民法968条1項参照)。そして、ほとんど全ての場合に相続人らが見つける遺言書といえば自筆証書遺言になります。
では遺言書を見つけたらどうすれば良いでしょうか。遺言書を見つけたら、遅滞なく家庭裁判所に提出し、検認を請求する必要があります(民法1004条1項)。これは上述の自筆証書遺言の形式性に関わるわけですが、遺言が本当に遺言者の作成にかかるかどうか確かめ、その改変を防ぎ、保存を確実にするためにあります。遺産目当てで遺言者になりすまして作成された自筆証書遺言の可能性がないとは言えないからです。
そして、もし遺言書を見つけたとしても、家庭裁判所に提出しないまま開封をすることは許されません。この場合は5万円以下の過料を取られます(民法1005条)。また、他の(推定)相続人の立ち合いのもとで開封をしていないのであれば尚更遺言書の信用性は失われることになるでしょう。
家庭裁判所に提出しないまま遺言書を開封しても遺言書が無効になるわけではないですが、遺言書としての信用性が失われる可能性があるため、開封をしない方が賢明でしょう。
以上をまとめると、
- 遺言書を見つけたら家庭裁判所に提出して、遺言書の検認を請求する
- 家などで遺言書を見つけてもすぐに開封せずに、家庭裁判所に開封しないまま提出する
ということになります。
もっとも、上記の話は遺言書の中では自筆証書遺言に限ります。そして、確実に遺言書の内容を実現させたいのであれば、公正証書遺言(民法969条参照)をお勧めします。公正証書遺言は、公証人と証人の立ち合いのもとで作成される遺言書であり、家庭裁判所への提出・検認の請求の必要がありません(民法1004条2項)。
また、もし遺言書を家庭裁判所に提出する前に開封してしまい遺言書の信用性がなくなったり、遺言書そのものが形式的な不備を伴っている場合(例えば、捺印をしていないなど)、遺産相続は民法に定めてある相続方法でなされます。つまり、法定相続人が民法に定められた割合で遺産を分割します。その分割方法は共同相続人間の遺産分割協議にて行われます。つまり、本来遺言書に書いてあったものを相続人自身の手で話し合いをしながら決定していくことになります。
以上のことを念頭におくと、遺産相続が比較的スムーズにいくと思われます。
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