家族が亡くなると、相続に関連してさまざまな手続きを進める必要があります。特に不動産が含まれる場合は、登記義務など期限のある手続きもありますので、全体の流れを把握しておくことが大切です。
相続開始から手続き完了まで、どのような順序で何をすべきかをここで説明します。

死亡届など公的な手続きを済ませる
相続は被相続人の死亡と同時に開始され、まずは「7日以内に死亡届を市区町村役場に提出する」ことから始めましょう。
その際、不動産を含む相続財産の管理責任も相続人に移るため、空き家になる不動産がある場合は防犯対策なども考慮する必要があります。
また、死亡届提出後は年金受給の停止手続きや健康保険証の返却、世帯主変更届(必要な場合)などの手続きも14日以内に行います。被相続人の預貯金口座は金融機関が死亡を知った時点で凍結されるため、当面の費用については事前に準備しておくか、別途対策を講じることも重要です。
遺言書をチェックする
相続手続きの方向性を決める大きな要素が遺言書の存在です。遺言書がある場合とない場合では手続きの流れが大きく変わり、不動産の承継方法にも大きな影響を与える可能性があります。
なお、遺言書には次の種類があり、それぞれで保管場所やその後の手続きなども異なることは留意してください。
- 公正証書遺言(公証役場で作成・保管される。検認手続きは不要)
- 自筆証書遺言(遺言者が自分で作成するもの。検認手続は原則として必要であるが、法務局の制度を利用して保管してもらっているときは不要)
- 秘密証書遺言(内容を秘密にした上で、公証役場で、作成した事実について認証を受けるもの)
遺言書が被相続人の自宅から見つかった場合など、検認が必要な場合はその場で中身を見ないよう注意してください。そのまま家庭裁判所に持って行き、今後の偽造や変造を防ぐ検認の手続きを行う必要があります。
相続人を確定させる

相続手続きを進めるには、法定相続人を確定させなくてはなりません。
これには被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本の収集が必要となります。不動産の相続登記を行う際にも戸籍謄本一式が必要となりますし、そのほかさまざまな相続手続きで必要とされる基本的な書類です。
なお、手続きのたびに戸籍謄本一式を集めるのは大変な作業ですので、「法定相続情報証明制度」の活用をおすすめします。
法務局に戸籍謄本一式と相続関係を表した一覧図を提出し、登記官が内容を確認した上で、一覧図に認証文を付した写しを交付してくれます。この一覧図は戸籍謄本一式の代わりに使用でき、その後無料で写しを発行してもらえるなど、多くの相続手続きがあるときでも効率的に進められるようになります。はじめに法務局での手続きが必要となりますが、司法書士など相続に強い専門家に相談すれば問題なく対処できるでしょう。
相続財産の内容と価額を確定させる
相続財産には現金や預貯金だけでなく、不動産、有価証券、債務なども含まれます。すべての財産を漏れなく調査し、正確な評価額を把握することが重要です。特に不動産については、登記簿謄本の確認や現地調査なども必要になる場合があります。
具体的な対応としては、まず「被相続人の自宅にある書類を確認し、固定資産税納税通知書、預貯金通帳、証券会社からの書類、保険証券などを収集すること」が挙げられます。
また、借入金や保証債務などの負債についても忘れずに調査しましょう。
各財産の価額については、残高証明書等を発行してもらうだけでわかるケースもあれば、計算を要するケースもあります。土地の評価や株式の評価などは特に高い専門性が求められるため、専門家に相談して対処しましょう。
※遺産の総額が特に高額なケースでは相続税が課されることもある。その場合は相続税評価額を調べ、申告書を作成し、税務署に提出する必要がある。
遺産分割協議で誰が何を取得するのか定める
遺言書がない場合や遺言書で指定されていない財産がある場合は、相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。
このときの協議では、各相続人がどの財産をどのように取得するかを決定します。不動産が含まれる場合は、その特性を考慮した分割方法を検討する必要があるでしょう。
具体的には次のような分割方法があります。
現物分割 | 土地はA、建物はB、預金はCのように具体的な財産を各相続人に分配する方法 |
|---|---|
換価分割 | 遺産を売却して現金化し、その代金を分配する方法 |
代償分割 | 1人の相続人が不動産を取得し、ほかの相続人に金銭を支払うことでバランスを取る相続方法 |
共有分割 | 複数の相続人で財産を共有する方法 |
※このうち共有については一般的に推奨されていない。共有状態になると、たとえば建物を売りたくなっても共有者全員の同意が必要になるなど、その後の管理運用で困る場面が多く出てくるため。
協議が成立すれば、相続人全員の署名と押印を付した遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書は自身が特定の財産を承継した事実を証明する書類として役立ち、不動産の相続登記や預貯金の名義変更などでも必要となるものです。
相続土地国庫帰属制度で土地を譲渡できる
不動産に資産価値があれば相続人にとって利益がありますが、有効活用できるものばかりではありません。使いどころがわからない、利用価値の低い物件も多く、相続することでかえって管理の負担が生じてしまうなどマイナス面が大きなケースもあるのです
そのようなケースでは「相続土地国庫帰属制度」の活用を検討してみましょう。
同制度は、相続した土地が不要なときに、一定の要件を満たすことができれば当該土地を国に引き渡すことができる制度です。建物がある土地や担保権が設定されている土地などは対象外となりますが、手元に残したくない事情があるなら検討する価値はあるでしょう。
財産の名義変更(登記など)を行う

遺産分割協議の結果に従い、各財産の移転手続きを進めましょう。多くのものは引き渡しをするだけで完了しますので、あらゆる財産に手続きが生じるわけではありません。しかし不動産など一定の財産については名義変更手続きが必要となるため、忘れないように対処しましょう。
もし土地や建物などの不動産を取得したのなら法務局で相続登記の申請を行いますし、預貯金については各金融機関で名義変更や解約の手続きを進めます。株式や投資信託がある場合は証券会社での手続きが必要で、自動車については陸運局で名義変更を行います。
「どの財産にどんな手続きが必要になるのかわからない」と悩む方は、司法書士へご相談いただければと思います。
相続登記は法律上の義務
不動産の相続登記については2024年4月1日から法律上の義務となっています。それまで相続後の登記申請は相続人の任意とされてきたのですが、所有者不明の物件が増えてしまったという背景から、法改正を経て必ずしないといけないものへと変わったのです。
そこで相続により不動産を取得した相続人は、相続を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料が適用されることが法定されており、失念していただけでもペナルティを課されるおそれがあるためご注意ください。
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